第74回教師力BRUSH-UPセミナー 兼 第5回思考ツール学習会in函館
期 日:平成27年10月17日(土)
テーマ:アクティブ・ラーニング×思考ツール×協同学習
~授業づくりの教材論・システム論・評価論と、それらを全校で機能させるための校内研修体制づくり~
講 師:内藤一志(北海道教育大学函館校)
大野睦仁(札幌市立小学校)
藤原友和(函館市立昭和小学校)
提 案:長谷川美栄子(附属函館中学校)/長澤元子(函館商業高校定時制)
ファシリテーション・グラフィック:
小林雅哉(伊達市立伊達小学校)/米田真琴(新篠津村立新篠津中学校)/戸来友美(千歳市立信濃小学校)/中原 茜(八雲町立東野小学校)ほか
参加費:2000円
日 程:
9:00 開場・受付・準備
9:35 開会セレモニー/ガイダンス 藤原友和
9:40 第1講座「研修づくりで大切にしたい3つのこと」大野睦仁(札幌市・小学校)
10:30 休憩
10:40 第2講座『ALで学ぶ“論理力”を育てる「書くこと』の授業」(藤原友和)
※提案30分+協議50分
指定討論者:内藤一志・大野睦仁・戸来友美
12:00 昼食
13:00 第3講座『協同学習で学ぶ“コーディネート力”を鍛える「話すこと・聞くこと」の授業』(長谷川美栄子)
※提案30分+協議50分
指定討論者:内藤一志・米田真琴・藤倉 稔
14:20 休憩
14:35 第4講座『思考ツールで学ぶ“包括的支援を要する生徒”のための国語の授業』(長澤元子)
※提案30分+協議50分
指定討論者:内藤一志・吉野さやか・野呂篤史
15:55 休憩
16:10 第5講座「校内研修をALにしよう!“研修推進ワークシート”による校内研修の活性化」(藤原友和)
16:30 鼎談「校内研修をすすめるってどういうこと?」大野睦仁×鹿野哲子×小林雅哉
16:50 閉会セレモニー
18:00~ 懇親会
【ふりかえり】
もう十年になる「教師力Brush-Upセミナー」と、昨年度から始めた「思考ツール学習会」のコラボという形で企画させてもらった今回の企画。様々な意味で新しいイベントとなった。自分のタイムラインにシェアした友人たちのふり返りをみると、とても充実していたようだったということ、そしてその充実の中身が一人一人違うことに、企画者としてはとても満足している。とてもとても満足している。
それは、学習会の中身というのももちろんだが、「藤原個人としての学びやすい場」に、自分で思っていたよりも「来てくれた人にとって益があった」ということを実感することができたからだ。内藤先生(北教大函館校)は言語活動を指して「学習可能性を高める環境構成の一つ」という言葉で表現していたが、僕はそれを教師の学びの場レベルで実現したいという思いがあった。つまり、参加者それぞれが、それぞれのレベルで、何らかの発見をし、強烈な内省を生むしかけができないだろうか、という試みでもあった。
日程をみるとわかるように、タイトルは並列、三本の提案は校種も切り口も違う、まとめも行わず、最初から最後まで「自分の実感に響くところだけ」聞いてもらいたいというつくりになっている。ただ、校内研修という軸を通すことで、自分たちの日常に返していくにはという思考が働き続けるようにもしている。
僕は企画者であり、提案者であり、ファシリテーターでもあった。そして、大野さんの基調提案に該当する大野さん自身の研究部的ライフヒストリーを聞いたあとは、自分の提案を大野さんの講座に引き寄せて展開し、ファシリテーターとして協議を進行した。つまり、一日の前半でモデル提示をした。そしてそのあとは自動運転化した流れにのり、それぞれ際だった個性をもつ参加者たちを「じゃましないように」心がけて1日を過ごした。結果、これまでに自分自身も体験したことのなかった空間が生まれた。化学反応といおうか。創発の嵐といおうか。1日経ってもまだ興奮している。
大野さんの講座は、これまでの研究主任としてのありようをふりかえり、現在の取り組みと展望を語るものだった。大野さんの明るい人柄と、レジリエンスの高さは万人の知るところだが、それが学校づくりのレベル、経営者の視点で行われていることに圧倒されるものだった。しかし、僕のような物量作戦をとるわけではない。徹底して興味を抱かせ、関心をよせ、全員参加で「明後日を考える」取り組みをすすめていたのだ。洞爺での学習会でも、その一端を聞くことができたが、前任校と現任校の対比と、それから「パレート」および「マーケティングイノベーション」をひきながら、「それでも諦めない」ありようを提案していただいたことで、参加者にとって、研修を進める楽しさ・実りの豊かさを示すことになった。基調講演として、こんなに素晴らしい提案はなかったと思う。
それに見事にかみあったのが、指定討論者の戸来さんだ。大野さんのあとが僕の講座で、その協議には大野さん・戸来さん・内藤先生に指定討論者として登壇してもらった。フロアからQを引き出した後のセッションで、戸来さんは自らを「いつか研修主任になりたいとあこがれている私」という立場表明をして語り始めた。それが、正規に計画されている研修とは違った場面で、いわゆる現職研修を活性化している日常の開陳となったときに、大野さんのちょうどセットになって「研修が機能するとはこういう姿」という具体的な像が立ち現れた。それに触発される形で、内藤先生が藤沢市の事例を紹介してくれた。ここに一つのまとまりができた。「校内研修実機能論」のような話になったのである。
午後の長谷川先生の講座は、この夏に行われた日本国語教育学会全国大会での提言をベースにしたものだった。事前の学習会において内容を知っていたぼくは、その緻密さと大胆さ、提案性にしびれていた。なんとか協議を「きちんと中学国語で」行いたかった。そこにヨネマが絶妙な絡みを見せてくれた。長谷川先生の提案内容に触発されたヨネマは、本気で「聞きたいことがある」と真っ向からぶつかっていった。このやりとりのおもしろさは会場にいた人でなければわからない、熱を帯びたものだった。そしてその議論をひっくり返す、中学数学教師、藤倉。算数の研究に熱心に取り組んでいた戸来さんもそこに参加する。一触即発か、というような場面さえもあった熱い議論を引き取って、「めざす教科知」という話で参加者を納得に導いた内藤先生はやはりすごいな、と思う。僕はこの場面では後ろに引いて、存在を消していた。国語の話がちょっとマニアックになってきたな、というところで僕が介入しようとした瞬間に、登場する藤倉。真っ赤になって議論を説明し直すヨネマ。若い人たちのまっすぐな情熱に、僕はなんだか感動してしまった。そして長谷川さんも、それを正面から受けて、まったくぶれずに話して下さる。本気と本気がぶつかる刺激的な場面だった。
そして続くのが長澤先生の思考ツールの提案。これまでに聞いたことがないくらいにBrushUpされていて、驚かされた。商業高校の定時制に通学する包括的支援を要する生徒、の現実の姿を知っている僕は、ただただ、その取り組みに敬意を払うばかりだが、それとともに、プレゼン能力の著しい伸びにも感激した。この人は頭がいい。本当に地頭がいいのに、それを表に出さない。結果だけを残していく。尊敬する仲間である。さて、ぼくがここに指定討論者としてお願いしたのが、八雲で中学校の特別支援を担当する吉野さんと、今金高等養護で教鞭をとる野呂さんである。つまり、特別支援の窓口から、この生徒たちについて、その背景について、僕たちが日常を目にしている世界の偏縁に存在するカオス性に目を向けたかったのである。企画の意図を伝えた後は、完全にお任せ。これもまたおもしろい議論になった。出会うべきで出会ってなかった人たちを出会わせた。僕にはそういう手応えがあった。
僕の箸休め的な「研修推進ワークシートの実際」のあと、最後の鼎談。大野さん、鹿野さん、まさやんのトークである。大野さんが「議論の本棚」を用意してくれて、鹿野さんが「その本棚だったら、あたしはこれを載せる」と話し、まさやんは、「僕の本棚はもうちょっとこういう形をしているんですよね……」と訥々と語る。鹿野さんは前日に、研究部長として町内の公開研究会を終えたばかり。それも三年間のまとめとして、である。いま、このタイミングでなければできない話。取れたての果実のような話。三年間で醸した美酒のような話。それを大野さんというソムリエが紹介してくれる。そしてまさやんがそれにあうアペリティフをサーブしてくれる。そんな時間になった。
この鼎談の最後は、三人から「きょうよかったこと」というテーマでひとことずつはなしてもらった。そしてフロアにも同じテーマでおしゃべりしてもらって、そのまま終わる、という流れ。ぼくはこのオープンな終わり方がとても大切な意味を持つ一日になった、と自負している。あくまでも今日に限れば、ということだ。
こんな濃い一日を過ごしたので、身体はくたくた。精神的には大充実。
懇親会では、これまでみたことがなかったくらい、饒舌に語る恩師の姿に涙が出そうになった。
お礼を述べるべき相手が多すぎるので、ひとまずここまで。
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