2017年8月17日木曜日

ひと夏の経験

 現在の勤務校は開校して26年目。ちょうど私と同い年。といっても、教職経験の年数と同じという意味です。つまり、私が採用された年に開校したのです。

 そんな勤務校も、今年の夏休みに給排水工事に入りました。水飲み場やトイレ、職員室や特別教室の水回りなど、水の流れるところすべてを対象とした大がかりな工事です。これまで私は、勤めた学校で耐震工事やトイレの大規模改修を経験していますが、すべての給排水工事は今回が初めてでした。

 少しずつ仕上がっていくその工事のなかで、一瞬頭をもたげる感覚がありました。その正体は、いつも使っていたはずの水飲み場やトイレが、「あれ、こんな感じだったかな?」という違和感です。

 確かに、水道の蛇口など新しくなった部品もあるのですが、洗い場のシンクなどほとんどのものは、磨き上げられてまた元に戻されただけなのです。今まで見ていたはずのものが、これまで味わったことのない違和感として心の底から立ち上ってくると言えば伝わるでしょうか。

 さて、今年の教師力BRUSH-UPサマーセミナーは「リフレクション」をテーマとして行われました。参加された方はわかると思いますが、誰もがこれまでの教職経験を振り返るという大きな成果につながりました。

 「リフレクション=自己省察」と言葉では理解しつつも、これまでの教職経験、もっといえば自分の人生をじっくりと振り返りながら、これから先の未来を見据えた方が多かったのではないでしょうか。これは参加者に限らず、私たちサークルメンバーにも大きな益をもたらしたと言えるはずです。

 ところで私は、成人した教え子と飲む機会がこの夏何度かありました。一様に社会人ですから、皆それぞれ仕事の悩みや恋愛の悩みなど語る訳です。そこには中学校時代の独り善がりや自己中心的な考え方は消え去り、こちらもこちらで説教がましい話は一切しないでじっと聞く訳です。

 すると、自然発生的に「リフレクション=自己省察」が頭をもたげてくるのです。自分はこの教え子たちに何を残してあげたのだろうか。この子たちがこれから先生きていく上で大事な何かを伝えられたのだろうか。現在受け持っている中学3年生にはしっかり教えられているのだろうか。

 こうしたリフレクションにより自分の教職経験を顧みると同時に、これから先の教職人生を思い描くのです。そう、今見えていることや聞こえていることを大事にして、その一瞬一瞬を無駄にせず、子どもたちを教え、励まし、支えていくしかないのではないか、という結論に至るわけです。

 「何を今さらになって青っちょろいことを……」と、馬鹿にされるかもしれませんが、給排水工事とリフレクションと教え子との体験を通して、この夏私が感じたのはこのことでした。

(山下 幸)

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